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2017.03.01

食欲 その2

こんにちは、歯科医師田村です。

さて、前回に引き続き「食欲」のお話です。
前回は食べられなくなった患者さんの胃にチューブをつないで栄養を流し入れる、というところまで書きました。

これでは栄養は取れたとしても、食べる楽しみを全く感じられませんね。目で見て「美味しそうだな」と感じ、鼻で香りを嗅いで「いい匂いだな」と感じ、実際に口に入れて味を楽しんだり食感を楽しんだりするという、全てのことが出来なくなります。
中には「のどごしを楽しむ」という飲食物もありますよね。それも出来なくなります。

『生きてはいるけど、生きていることを楽しめていない』
これを『Quality of Life(生活の質)/QOL の低下』と言います。
(⚠QOLの解釈の仕方には様々あります)

以前私が拝見した患者さんで口から物が食べられていない、ほぼ寝たきりの患者さんがいました。
その方は意識はあるので、お話しすることはどうにかできるのですが、「もう生きていたくない」といつもネガティブなことばかり口にしていました。
治療としては「のどの飲み込む機能についての検査と入れ歯の作製」を行いました。
胃にチューブを入れた時は病院に入院して体力が弱ってしまっていたときだったので、飲み込みの機能が一時的に衰えていたのでしょう。しかし退院して改めて我々が検査をした時、飲み込み機能に異常はないと判断されました。
そのため、その方は少しずつ口から食べる事を再開し、痩せこけていた頬もふっくらとして血色も良くなり、以降ネガティブなことはほとんど口にすることはなくなり、むしろ「毎日が楽しい、ご飯も美味しくてたくさん食べてしまう、息子がお見舞いに来るので身なりも口の中も奇麗にしておかなければ」と嬉しそうにおっしゃっていました。
その方のQOLの向上に役立てたことで、我々も施設の看護師さんや介護士さん、お見舞いにくるご家族の方もとてもとても喜んで、やりがいを感じるとともに、嬉しさがこみ上げてきました。

上記の方のように「寝たきりで胃にチューブが入って」という方ばかりが食べられなくてQOL
が低いわけではありません。
普通に生活されている方でも「虫歯や歯周病で多く歯が抜けてしまって」「歯がとても痛くて噛めなくて」「生まれつき噛み合わせが悪くて上手に噛めなくて」など、様々な問題を抱えている方が多くいらっしゃいます。
そんな方々の問題を一緒に考えて、ひとつずつ少しずつでも解決に向かわせ、最終的にはその方々の満足を得られたりQOLの向上に貢献できれば、我々も嬉しいのです。
『患者さんが幸せであれば、私たちも幸せ』、そんな気持ちでスタッフどうし協力しながら日々頑張っています。
何か問題をお抱えの方々には、ぜひ相談にいらしていただきたいと思っています。

といったところで、二部作「食欲」、完結です!!